アジアの"いま"

鈴木 博
2021/10/06 12:23
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 アジア開発銀行(ADB)は、9月22日に「アジア経済見通し2021年改訂版」(Asian Development Outlook 2021 Update)」を発表しました。ADBでは、「アジア開発途上国では、新たな変異株の流行とともに、一部の国では更なる行動制限措置が取られるなど、依然として新型コロナウイルスのパンデミックに対する脆弱性が懸念される。コロナ封じ込め策やワクチン接種だけに注力するのではなく、企業や家庭への継続的な支援とともに、回復を促進するために、コロナ収束後の「ニューノーマル」に対応した経済各分野の再編成の取り組みにも焦点を当てる必要がある」と指摘しています。日本等の先進国を除くアジア地域の2021年の成長率を7.1%(前回4月予測7.3%)に引き下げました。

 カンボジアについては、2021年のGDP成長率を1.9%(前回4.0%)に引き下げました。2021年は、新型コロナの影響が長引き、国内需要の回復を阻害しているとしています。2022年は、ワクチン接種が2021年末には完了するとして、5.5%(前回5.5%)まで上昇すると予測しました。新型コロナ対策のためのロックダウンと工場閉鎖で打撃を受けている縫製業は輸出も弱含んでいます。ただ、建設業には回復の兆しがあり、建設資材の輸入は対前年同期比23.5%増となっています。このため、第二次産業の成長率は、2021年5.3%(前回7.1%)となると見ています。第一次産業の成長率は、農産品輸出、特にコメ以外の輸出が堅調であること等から、2020年1.5%(前回1.3%)としています。第三次産業については、2021年中は観光業の苦境は続き、飲食・宿泊・輸送等の国内サービス業も打撃が長引くと見て、2021年マイナス0.6%(前回3.3%)に引き下げました。

 物価上昇率予測は、2021年2.9%(前回3.1%)、2022年2.7%(前回3.0%)で、安定的と見ています。対外収支については、経常収支の赤字(対GDP比)が2020年12.1%、2021年15.6%(前回15.6%)、2022年12.9%(前回12.3)%と、予想よりは悪化せず、2022年以降改善方向に向かうと見ています。ただ、金の輸出(流失)が続いていることに懸念を示しています。

 カンボジア政府の対策としては、貸付条件の変更(緩和)の継続を評価しています。民間向け貸付は堅調に推移し、対前年同期比23.3%増となっています。また、カンボジアでのワクチン接種は世界的に見ても進展が早く、2021年8月31日現在、アジア開発途上国で完全にワクチン接種を終えた人は全人口の28.7%にとどまるのに対し、カンボジアは53.3%と米国51.8%、EU58.0%に匹敵しています。また、政府が中期経済回復計画を策定したことも評価しています。

 リスクとしては、ウイルスの変異株の感染拡大を第一に挙げています。この他、貸付条件変更の終了に伴う不良債権比率の上昇、建設不動産セクターでのショックの可能性等を挙げています。

アジア開発銀行のサイト(和文)

https://www.adb.org/ja/news/adb-trims-developing-asia-2021-growth-outlook-amid-continued-covid-19-concerns

鈴木 博
コンサルタント

カンボジア総合研究所
CEO/チーフエコノミスト


東京大学経済学部卒。海外経済協力基金、国際協力銀行等で途上国向け円借款業務を約30年。2007年からカンボジア経済財政省上席顧問エコノミスト。2010年カンボジア総合研究所設立。日本企業とカンボジアの開発のWin-Win関係を目指して、経済調査、情報提供を行っている。

ブログ「カンボジア経済」 http://blog.goo.ne.jp/cambodiasoken


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