アジアの"いま"

鈴木 博
2021/02/03 13:06
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 1月20日、アジア開発銀行(ADB)は、「カンボジアにおける人材スキル開発によるインダストリー4.0の利益の収穫」と題する報告書を公表しました。東南アジアでは、適切なスキルを有する人材を準備して第4次産業革命(インダストリー4.0)で変貌する雇用に対応していくことが重要な課題となっています。多くの国で自動化やIT等の新技術導入による雇用への影響が心配されています。この報告書では、第4次産業革命の影響を予測し、将来の雇用と人材を準備するための政策の方向性を検討しています。カンボジアについては、多くの雇用を支える縫製産業と観光業を中心に調査が実施されました。

 報告書ではまず、第4次産業革命の雇用への影響について、雇用を減少させると同時に新たな需要が生まれると分析しています。第4次産業革命により、縫製業では12%の労働者が失職し、観光業でも3%が失業すると予測しました。新たな雇用は、これまでの単純労働から高度な内容にシフトするものと見られ、労働者のスキル不足が課題となるため、スキル拡充のための研修機関の整備が重要となると指摘しています。

 ADBでは、第4次産業革命に対応するロードマップの作成が必要であると提言しました。特に、産業側のニーズを考慮した第4次産業革命対応研修プログラムの開発が重要であるとしています。また、研修の品質確保、スキル証明プログラム、研修を実施する企業へのインセンティブ等も検討を進めるべきであるとしています。

 カンボジアでは、現在、低賃金と近隣国との連結性を活かした労働集約型・輸出志向型産業が、重要なポジションを占めています。そうした中で、ITやフィンテック等のイノベーション産業も芽吹き始めており、これらの新産業の振興も重要な課題となっています。カンボジアのような新興国では、日本でみられるような既得権益層によるしがらみが少ないこともあり、こうした新しい動きに対するスピード感が高いものと見られ、カンボジアの官民の取り組みが期待されます。

アジア開発銀行の発表

https://www.adb.org/news/skills-development-vital-enabling-transition-industry-4-0-southeast-asia-adb-study

鈴木 博
コンサルタント

カンボジア総合研究所
CEO/チーフエコノミスト


東京大学経済学部卒。海外経済協力基金、国際協力銀行等で途上国向け円借款業務を約30年。2007年からカンボジア経済財政省上席顧問エコノミスト。2010年カンボジア総合研究所設立。日本企業とカンボジアの開発のWin-Win関係を目指して、経済調査、情報提供を行っている。

ブログ「カンボジア経済」 http://blog.goo.ne.jp/cambodiasoken


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