アジアの"いま"

鈴木 博
2021/11/10 16:28
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 10月22日、カンボジアの内閣にあたる閣僚評議会は、2022年度予算法案を承認しました。予算法案は今後、国民議会(下院)及び上院で討議され、年末までに成立する見込みです。この中で、初めて国債を発行するとしており、3億ドル相当を発行する計画としています。政府では、国債によって調達した資金は、エネルギー、灌漑、インフラ等の公的投資事業35件に使用するとしています。
 カンボジアの国債発行については、日本政府の支援で2018年に野村総研が調査・提言を行っています。調査では、カンボジアで国債を発行した場合、期間5年もので、金利がドル建てで7%以上、リエル建て6.5%~7.75%程度と高い水準となる一方、ODA等で借り入れた場合の金利が低く(日本の円借款金利は0.01%)、償還期間も長い(円借款の場合、最長40年)ため、海外からの借入を代替する意味での国債発行は必要性が低いとしています。他方、カンボジア政府の資金フローの安定化、国家社会保障基金(保険・年金)等の機関投資家の安定的長期運用手段の提供といった意味では、リエル建ての国債発行は意味があるものとしています。また、高度にドル化した経済の中でリエルの使用を促進するため、カンボジアの中央銀行(NBC)が銀行貸付の10%以上をリエル建てとすることを求めており、リエル建ての国債については一定の需要があると見込んでいます。その後、国債の発行・流通を目指して、新政府証券法案が2020年9月に完成し、12月21日に上院で承認されていました。

 カンボジアでは、インフラ整備等のために海外から借り入れを行っていますが、今のところ金利が低く期間も長い譲許的借款(日本の円借款や国際機関からの借り入れ等)を中心に借り入れており、いわゆる「借金漬け」を免れています。国債を使った民間からの借り入れは、金利も高く、返済期間も短いものとなるため、政府の資金繰り安定化や金融機関のリエル使用促進といったことを目的とした限定的発行とすることが当面は必要となるものと見られます。また、日本のように野放図に国債発行を行うだけの信用力がカンボジアには欠けているため、債務の管理や国債によって調達した資金の使途制限等を徹底して行うことも重要な課題になるものと見られます。

鈴木 博
コンサルタント

カンボジア総合研究所
CEO/チーフエコノミスト


東京大学経済学部卒。海外経済協力基金、国際協力銀行等で途上国向け円借款業務を約30年。2007年からカンボジア経済財政省上席顧問エコノミスト。2010年カンボジア総合研究所設立。日本企業とカンボジアの開発のWin-Win関係を目指して、経済調査、情報提供を行っている。

ブログ「カンボジア経済」 http://blog.goo.ne.jp/cambodiasoken


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