アジアの"いま"

鈴木 博
2022/02/22 19:22
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 1月18日、カンボジア政府は、マネーロンダリング対策タスクフォースを設置しました。トップは、司法大臣が務め、関係省庁関係者28名が参加しています。

 国際機関のマネーロンダリングに関する金融活動作業部会(Financial Action Task Force on Money Laundering: FATF)は、カンボジアを引き続き「戦略的欠陥はあるもののFATFと対応策を策定済の国」に分類しています。この分類は、一般に「グレー・リスト」と呼ばれており、他には、フィリピン、パキスタン、ミャンマー等が含まれており、合計23カ国です(2021年10月)。カンボジアは、2015年に一度この分類から外れましたが、マネーロンダリング及びテロ資金対策の新基準に基づいた評価で、2019年2月に再びグレー・リスト入りすることとなりました。なお、グレーの下に「ブラック・リスト」があり、イランと北朝鮮が含まれています。FATFでは、カンボジアに対策を強化するためのアクションプランの施行を強く求めています。

 今回設置したタスクフォースでは、資金洗浄・テロ資金供与対策法や大量兵器の拡散防止を図る法律の執行を促進・監督します。また、マネーロンダリング犯罪の摘発に向けた捜査や、捜査過程での資料収集などを強化するとしています。1月28日に開催された会議で、司法大臣は、FATFのアクションプランの進捗状況をレビューしました。大臣は、マネーロンダリング対策は国家的重要課題であるとして、アクションプランの完全実施に向けた努力を進めるよう強く求めました。

 マネーロンダリングやテロ資金の技術は、日進月歩で進化しています。また、カンボジアでは、中国からの投資も盛んですが、その資金には様々なものが含まれていると言われます。また、カンボジアと北朝鮮は、長く友好関係にあり、プノンペンには北朝鮮の大使館も存在しています。カンボジア経済は高度にドル化しているため、ほとんどの取引がドルで行われ、市中にはドル現金が一般に流通していることもマネーロンダリングを行う側にとっては目をつけやすいところと見られます。FATFと協力しつつ、各種対策を早急に進めていく必要性は高いものと見られます。

FATFのグレー・リスト

https://www.fatf-gafi.org/publications/high-risk-and-other-monitored-jurisdictions/documents/increased-monitoring-october-2021.html

鈴木 博
コンサルタント

カンボジア総合研究所
CEO/チーフエコノミスト


東京大学経済学部卒。海外経済協力基金、国際協力銀行等で途上国向け円借款業務を約30年。2007年からカンボジア経済財政省上席顧問エコノミスト。2010年カンボジア総合研究所設立。日本企業とカンボジアの開発のWin-Win関係を目指して、経済調査、情報提供を行っている。

ブログ「カンボジア経済」 http://blog.goo.ne.jp/cambodiasoken


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