アジアの"いま"

鈴木 博
2020/10/28 13:22
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 カンボジアでは毎年のように雨期の終わりに洪水となっています。今年は、10月中旬から降り始めた雨で、大きな被害が出ており、10月20日までに、34人の死者が出ています。10万4348世帯が被害を受け、4万2332人(1万583世帯)が避難しました。また、24万7408ヘクタールの水田が水没しているとのことです。

 また、主要国道も、国道2号線、3号線、4号線、5号線等の一部が冠水し、一時通行止めとなり、特に大型車の通行禁止が数日にわたり続いていました。このため、物流にも大きな影響が出ている模様です。

 工場の浸水被害も多く、79工場(プノンペン62工場、カンダール州13工場、コンポンスプー州4工場)が被害を受け、従業員約4万人の雇用に影響が出ています。これらの工場のうち40工場が洪水被害などにより操業一時停止に追い込まれたとのことです。

 フン・セン首相は、洪水で被害を受けた世帯向けに1戸当たり1000万リエル(約25万6000円)の支援金を拠出すると発表しました。富裕層や大企業に声をかけて、寄付金を募り、あっという間に7億円以上を集めた模様です。また、被災地を自ら次々と訪問し、大量の支援物資を配っています。更に、金融機関に対し、洪水被害にあった農村部の借入人に対する返済延期等の借入条件の緩和等も求めています。なお、政敵の野党側による支援物資配布も邪魔をしてはならないと指示を出す等、芸の細かいところも見せています。

 プノンペン中心部では、日本が支援した洪水対策事業が効果を発揮し、以前であれば膝まで水位が上がり、何日も水が引かなかったようなところも、浸水が浅くなり、水もすぐ引くといった状況でした。他方、開発が進む郊外では、これまでの自然の排水経路や遊水地が埋め立てられ、水位が上がり被害がひどくなっているところもあるようです。

 なお、水田が水につかり、稲が被害を受けたところも多いのですが、その一方で、洪水によって栄養分のある土も運ばれ、洪水の水を使った洪水農法による収穫もあります。洪水でできた一時的な池で魚取りをしている人も見かけました。洪水と言う自然の脅威をも恵みに変える、カンボジアの人々の知恵とたくましさには感銘を受けます。

鈴木 博
コンサルタント

カンボジア総合研究所
CEO/チーフエコノミスト


東京大学経済学部卒。海外経済協力基金、国際協力銀行等で途上国向け円借款業務を約30年。2007年からカンボジア経済財政省上席顧問エコノミスト。2010年カンボジア総合研究所設立。日本企業とカンボジアの開発のWin-Win関係を目指して、経済調査、情報提供を行っている。

ブログ「カンボジア経済」 http://blog.goo.ne.jp/cambodiasoken


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