アジアの"いま"

鈴木 博
2022/11/09 12:12
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 10月27日、カンボジア公共事業運輸省のスン・チャントル大臣は、最近開通したカンボジア初の高速道路(プノンペン~シアヌークビル)に続き、第2の高速道路を建設する意向を発表しました。第2の高速道路は、プノンペンとベトナム国境のバベットを結ぶ片側2車線138キロメートルの高速道路の計画です。バベットからベトナムのホーチミン市まではベトナム側が高速道路を建設する計画であり、プノンペンとホーチミンを繋ぐ大動脈となることが期待されます。

 スン・チャントル大臣によりますと、ASEANサミット会議の際にカンボジアを訪問予定の中国の首相と、11月7日にコンセッション枠組協定を締結する予定であるとしています。初の高速道路(シアヌークビル)については、中国政府系の中国路橋工程(CRBC)の現地法人のカンボジア・プノンペン・シアヌークビル・エクスプレスウエー(柬埔寨金港高速公路)が、BOT(建設・運営・譲渡)方式で受託しています。第2の高速道路も中国系企業がBOT方式で受託し、カンボジア政府は債務を負わない形となるものと見られます。大臣は、早ければ2023年6月にも着工する予定であるとしています。

 プノンペンとベトナム国境を結ぶ、カンボジア第2の高速道路のフィージビリティ調査は、当初日本の国際協力機構(JICA)の支援により実施されました。インドネシアの高速鉄道と同様に、残念ながら、中国に掠め取られてしまった形です。

 カンボジアにとって、バンコク~プノンペン~ホーチミンを結ぶ南部経済回廊の開発は、最も重要な課題の一つです。プノンペンとホーチミンを結ぶ高速道路が完成すれば、プノンペン周辺で生産される部品・製品の、ホーチミン周辺に集積する日本企業への輸出、ホーチミン周辺の港湾経由での日本や米国への輸出等が更に促進されるものと期待されます。

鈴木 博
コンサルタント

カンボジア総合研究所
CEO/チーフエコノミスト


東京大学経済学部卒。海外経済協力基金、国際協力銀行等で途上国向け円借款業務を約30年。2007年からカンボジア経済財政省上席顧問エコノミスト。2010年カンボジア総合研究所設立。日本企業とカンボジアの開発のWin-Win関係を目指して、経済調査、情報提供を行っている。

ブログ「カンボジア経済」 http://blog.goo.ne.jp/cambodiasoken


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