アジアの"いま"

鈴木 博
2019/05/15 08:48
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 4月25日~27日、中国・北京で第2回一帯一路会議が開催されました。中国政府が掲げる巨大経済圏構想「一帯一路」をテーマにした国際会議には、約150か国と90国際機関から5000人近くが参加したと言われます。カンボジアからは、フン・セン首相を始め閣僚も多数参加しました。今回の会議に米国は代表団を送らなかったこともあり、中国は「中国が投資対象国を借金漬けにし、債務の罠に嵌めている」との欧米からの強い懸念の払しょくに追われました。

 カンボジアにとって、今や中国は最大の援助国、外国投資供与国であり、最も多くの観光客を送り込んでくれる国でもあります。他方、欧米は、フン・セン首相の強権的政治手法への批判を強めており、特恵関税制度見直しにまで踏み込んできています。こうした中で、カンボジアのフン・セン首相は、米国の圧力の前に困難に直面している中国に塩を送ることにより、より大きな見返りを得ているものと見られます。今回もインフラへの投資や9000万ドルの軍事援助等を引き出しています。また、EUがセーフガード関税を課したコメについても、中国向けに年間40万トンを輸出することで合意したとしています。国際的格付機関のムーディーズは、最新レポートで、中国の一帯一路から最大の恩恵を受ける国の1つとして、カンボジアを挙げています。

 カンボジアは、スリランカやパキスタン等とは異なり、現在のところ、対外債務状況は全く問題ありません。このため、簡単には債務の罠に陥ることはないものと見られます。また、3月に起工したプノンペン~シアヌークビル間高速道路は、総工費20億ドルと巨額ですが、中国企業によるBOT方式で実施され、カンボジア政府は債務負担も債務保証もしていないとしています。

 今のところ、フン・セン首相による「良いとこ取り」はうまくいっていると見られますが、カンボジアへの中国による投資や、中国人の流入については、治安悪化や不法行為等の様々な懸念が出てきており、カンボジアの地元の人々との摩擦も日々強まっている点については、引き続き留意が必要なものと見られます。

鈴木 博
コンサルタント

カンボジア総合研究所
CEO/チーフエコノミスト


東京大学経済学部卒。海外経済協力基金、国際協力銀行等で途上国向け円借款業務を約30年。2007年からカンボジア経済財政省上席顧問エコノミスト。2010年カンボジア総合研究所設立。日本企業とカンボジアの開発のWin-Win関係を目指して、経済調査、情報提供を行っている。

ブログ「カンボジア経済」 http://blog.goo.ne.jp/cambodiasoken


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