アジアの"いま"

鈴木 博
2020/09/02 12:30
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 カンボジアの首都、プノンペンでの不動産価格の下落が次第に明らかになりつつあります。ここ数年は、中国からの投資に支えられて、実需以上の建設が続き、カンボジアの中央銀行や国際通貨基金(IMF)等の国際機関が、バブルの恐れがあるとして警鐘を鳴らしていました。昨年後半以降、オンラインカジノの取締りや、中国側による外貨流出規制等が重なり、中国からの投資に陰りが出ていましたが、今年の新型コロナの影響で、中国等、海外からの不動産投資が大幅に減少しています。中央銀行によれば、2020年上半期の不動産向けの海外直接投資は、24%も減少しているとのことです。

 建設中の新築物件の値引きも始まりました。2022年12月の販売開始を予定するロイヤル・スカイランド(総戸数1440戸)では、スタジオタイプを当初は12万9000ドル(約1370万円)で販売していましたが、100戸限定で54%割引の5万9000ドル(約630万円)で売り出しています。

 カンボジアの不動産は、資産を海外に移したい一部の中国人にとって格好の物件でしたが、この種の投資は、今年は大きく減少すると見られます。ただ、プノンペンの不動産は、自己資金や直接投資による購入が多いので、既存物件が大幅に値下がりするまでには時間がかかるものと見られます。日本のバブルの時は、転売目的で銀行借り入れによる購入が多かったため、不動産価格の下落が担保価値下落に直結し、銀行貸付が一気に不良債権化しました。現在のカンボジアでは銀行借入で不動産を転売目的で購入している層は限定的であると見られます。しかし、その一方で、不動産価格の修正に長期間を要することが懸念され、不動産市況の悪化は長く続く可能性もあります。また、こうした不動産価格の低下は、賃貸料の低下にもつながると見られ、もともと実需に不安のあった高級物件等、一部の「家賃保証付き」物件に大きな影響が出る可能性が懸念されます。更に、不動産会社の業績への深刻な影響も懸念されます。カンボジアでの不動産投資につきましては、様々なリスクがあり、十分な専門的検討が必要ですので、ご留意ください。

鈴木 博
コンサルタント

カンボジア総合研究所
CEO/チーフエコノミスト


東京大学経済学部卒。海外経済協力基金、国際協力銀行等で途上国向け円借款業務を約30年。2007年からカンボジア経済財政省上席顧問エコノミスト。2010年カンボジア総合研究所設立。日本企業とカンボジアの開発のWin-Win関係を目指して、経済調査、情報提供を行っている。

ブログ「カンボジア経済」 http://blog.goo.ne.jp/cambodiasoken


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