アジアの"いま"

鈴木 博
2017/08/23 17:21
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 8月4日、カンボジアの中央銀行であるカンボジア国立銀行(National Bank of Cambodia: NBC)は、年次報告書2016を発表しました。
 内容は、世界経済と国内経済、金融政策、国際収支と外貨準備、銀行システムの開発、中央銀行活動、カンボジア金融情報機関(CAFIU)、国際協力、中央銀行の内部管理、2017年の目標等です。経済状況や金融システムを概観するにはとても有益な報告書です。
 2016年の注目点は、まず、マクロ経済の安定です。成長率は、2016年は7%でした。縫製(12%増)、建設(15.9%増)、観光(6.3%増)が引き続き好調です。物価上昇率は、2.9%でした。リエルの対ドル為替レートは、4050リエル/ドル近辺で推移しました。また、貿易収支の赤字も減少傾向にあり、対GDP比7.2%にまで縮小しました。赤字は、サービス収支(観光等)、移転収支(ODA等)、資本収支(直接投資等)の黒字で埋め合わせて、総合収支では、GDP比5.7%の黒字となりました。この結果、2016年末の外貨準備は、約64億ドル(輸入の5か月分以上)に達しています。
 NBCでは、高度にドル化した経済の中でのリエルの使用促進、CAFIUによる資金洗浄やテロリズムへの資金供給を防止する対策、マイクロファイナンスの金利引き下げ、即時決済システム(FAST)や中央共有交換メカニズム(central shared switch mechanism)による銀行間取引の効率化、金融包摂の促進、銀行セクターの健全性維持等に努めたいとしています。
 今後の経済のリスクとしては、ドル高の輸出・観光への影響、ドル金利上昇による不動産セクターへの影響、生産性向上を上回る賃金上昇による国際競争力への影響を挙げています。また、課題として、慎重な脱ドル化、エネルギーと運輸コストの低減、インフラの改善、熟練労働力の拡充等が必要としています。
 カンボジアの金融・通貨制度は、整備の途上にありますが、地道な努力が継続されており、安定的な発展が期待されます。

中央銀行年次報告書のサイト(英文です)
https://www.nbc.org.kh/download_files/publication/annual_rep_eng/Annual_Report_2016_English.pdf

鈴木 博
コンサルタント

カンボジア総合研究所
CEO/チーフエコノミスト


東京大学経済学部卒。海外経済協力基金、国際協力銀行等で途上国向け円借款業務を約30年。2007年からカンボジア経済財政省上席顧問エコノミスト。2010年カンボジア総合研究所設立。日本企業とカンボジアの開発のWin-Win関係を目指して、経済調査、情報提供を行っている。

ブログ「カンボジア経済」 http://blog.goo.ne.jp/cambodiasoken


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