アジアの"いま"

鈴木 博
2020/01/08 13:31
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 カンボジア公共事業・運輸省は、プノンペン~シアヌークビル間高速道路が2023年前半に完工するとの見通しを示しました。同省の報道官によると、高速道路の建設は今年3月末に始まり、現在、工事の進捗率は7%としており、2020年初頭以降本格的工事を開始するとしています。事業の影響評価や建設用地の収用に伴う補償に関しても、まもなく終了する見通しとしています。

 高速道路は、プノンペン近郊の環状3号線からスタートし、中国系企業が開発を進めるスタンハウを経由してシアヌークビル港近くまでを結ぶ片側2車線、総延長190キロメートルの計画です。完成後は、プノンペン~シアヌークビル間を2時間半程度で走行可能になるとしています。総工費は、20億1900万ドル(約2220億円)の見込みです。中国政府系の中国路橋工程(CRBC)の現地法人のカンボジア・プノンペン・シアヌークビル・エクスプレスウエー(柬埔寨金港高速公路)が、BOT(建設・運営・譲渡)方式で受託しています。委託運営期間は50 年とのことです。

 総工費を考えると、通行料収入だけで建設費までフルリカバリーすることは、かなり困難と見られます。また、カンボジア政府は債務も負わず、債務保証もしていないとしており、中国企業がリスクを全て負担するスキームとなっています。財務の健全性維持が可能かどうかについては、かなり懸念のあるスキームと言えます。

鈴木 博
コンサルタント

カンボジア総合研究所
CEO/チーフエコノミスト


東京大学経済学部卒。海外経済協力基金、国際協力銀行等で途上国向け円借款業務を約30年。2007年からカンボジア経済財政省上席顧問エコノミスト。2010年カンボジア総合研究所設立。日本企業とカンボジアの開発のWin-Win関係を目指して、経済調査、情報提供を行っている。

ブログ「カンボジア経済」 http://blog.goo.ne.jp/cambodiasoken


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