アジアの"いま"

鈴木 博
2021/09/22 10:57
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 9月12日・13日、中国の王毅国務委員兼外相は、カンボジアを訪問しました。王毅外相は、カンボジアのほか、ベトナム、シンガポール、韓国を訪問し、バイデン米政権が同盟国などと形成を進める「対中包囲網」を牽制する狙いがあると見られています。

 カンボジアでは、まず、中国の支援で完成したモロドク・テクノ新国立競技場の引き渡し式に参加しました。この競技場は、中国政府が1億6000万ドル(約180億円)を支援し、プノンペン郊外に建設されたもので、6万人の観客の収容が可能で、2023年に開催される東南アジア競技大会のメイン会場になる予定です。なお、総工費が、東京の新国立競技場の10分の1であり、その品質を懸念する声もあります。

 また、王毅外相は、フン・セン首相、プラック・ソコン外務大臣等と会談し、中国が今後もカンボジアの開発に協力していくことを表明しました。王毅外相とフン・セン首相は、経済・技術、不発弾処理、保健等に関する6件の協力文書の調印に臨席しました。この文書調印により、中国はカンボジアに対し、2億7000万ドル(約297億円)を供与することを約束しました。また、不発弾の処理事業に250万ドルを供与することも決定されました。

 今回の王毅外相の外遊は、最近、米国が関与を強める東南アジアで、巻き返しを図る狙いとみられています。しかし、「親中国」はカンボジアのみで、反中のベトナム、バランス外交のシンガポール、風見鶏の韓国等では、苦労のわりに効果が限定的であったものと見られます。徳の無い国の外務大臣も苦労が絶えないものだと実感します。その一方、カンボジアは、米中冷戦の板挟みとなりながら、親中姿勢を見せることで「美味しいところ取り」に成功しているようにも見え、フン・セン首相のしたたかな外交姿勢に注目が必要であるものと見られます。

鈴木 博
コンサルタント

カンボジア総合研究所
CEO/チーフエコノミスト


東京大学経済学部卒。海外経済協力基金、国際協力銀行等で途上国向け円借款業務を約30年。2007年からカンボジア経済財政省上席顧問エコノミスト。2010年カンボジア総合研究所設立。日本企業とカンボジアの開発のWin-Win関係を目指して、経済調査、情報提供を行っている。

ブログ「カンボジア経済」 http://blog.goo.ne.jp/cambodiasoken


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