アジアの"いま"

鈴木 博
2023/05/17 02:12
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 カンボジアで国連平和維持活動(PKO)に参加していた岡山県警警視、高田晴行さん(当時警部補、33歳)が武装集団に殺害された事件から30年となりました。5月2日、カンボジアで追悼行事が行われました。

 1993年5月4日昼過ぎ、タイ国境に近いカンボジア北西部のバンテイメンチェイ州アンピル村で、同村に駐在している国連カンボジア暫定統治機構の日本人文民警察官5人が、オランダ海兵隊UNTAC部隊の護衛を受け、国道691号をパトロール巡回中に、ポルポト派とみられる身元不明の武装ゲリラに襲撃されました。10人程度とみられる武装ゲリラは、先頭車両を対戦車ロケット弾で攻撃し、車列が停止すると、自動小銃で一斉射撃をしたとのことです。オランダ海兵隊も応戦しましたが、現場で高田警部補が死亡、他の4人の日本人文民警察官も重傷を負い、ヘリコプターでバンコク市内のプミポン空軍病院に搬送されました。

 5月2日には、在カンボジア日本大使館等により「慰霊の集い」が、プノンペンのタン・コーサン寺院で行われました。式典には、植野篤志大使、在留邦人代表、カンボジア政府関係者ら約20人が参列し、慰霊碑に献花しました。

 高田さんの母親、幸子さん(90)は、「30年があっという間にたちました。カンボジアのために働いた晴行のことをいつまでも忘れないでほしいです」と話しています。

 同じ1993年の4月8日には、当時25歳だった中田厚仁さんも、国連のボランティアとしてカンボジアの総選挙を支援していた最中に、銃撃され、亡くなられました。

 日本は、国際平和への積極的貢献を行うため、1992年の通常国会で「国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律」(PKO法)を可決しました。国会審議では、当時の社会党や共産党が理不尽な反対行動を行うとともに、多くの条件を求めたことが、その後の現場の手足を縛る結果となったとの批判の声も強いものがあります。

 カンボジアのために命を懸けた日本人がいたことを決して忘れてはならないと強く思っております。高田警視と中田厚仁さんのお二人のご冥福を心よりお祈りしております。また、日本の国際貢献活動が、カンボジアの復興に大きく貢献したこと、そして多くのカンボジアの方々が日本に感謝していることもぜひ強調しておきたいと思います。これまでの関係者の方々の献身的な努力に敬意を表します。

ブログ「カンボジア経済」2023年4月17日「カンボジア国連ボランティア中田さんの死から30年」

https://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/2930ebb4e713ae60ffee9bc2b0b1925b

鈴木 博
コンサルタント

カンボジア総合研究所
CEO/チーフエコノミスト


東京大学経済学部卒。海外経済協力基金、国際協力銀行等で途上国向け円借款業務を約30年。2007年からカンボジア経済財政省上席顧問エコノミスト。2010年カンボジア総合研究所設立。日本企業とカンボジアの開発のWin-Win関係を目指して、経済調査、情報提供を行っている。

ブログ「カンボジア経済」 http://blog.goo.ne.jp/cambodiasoken


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