アジアの"いま"

鈴木 博
2017/06/21 10:43
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 6月8日、日本経済新聞は、「アジア港湾権益、日中競い合い JICAは要衝地で出資」と題する記事を掲載しました。記事では、「アジアの海洋権益を巡る日本と中国の競り合いが激しくなってきた。国際協力機構(JICA)が海運の要衝であるカンボジアの港湾公社に出資するほか、スリランカでも三井物産がインドの財閥グループと港湾整備・運営の一体受注を目指す。広域経済圏構想「一帯一路」に沿って各国の港湾運営への関与を強める中国に対し、日本もエネルギーの安定的な輸送路確保に向けて手を打つ。」としています。
 6月8日にカンボジア証券取引所に上場したシアヌークビル港湾公社の新規株式公開(IPO)では、戦略的投資家を目指して、中国企業が動いているという情報がありました。シアヌークビル港は、これまで日本政府からの円借款等による支援を活用して開発が進められてきている、カンボジアでも最も重要な港湾です。中国海軍から見ると、ASEAN諸国には、安心して寄港できる港がないことも事実であり、親中派となりつつあるカンボジアのシアヌークビル港は、願ってもない重要港湾となります。上記記事でも、「多額の円借款で整備したにもかかわらず中国勢がなりふり構わず株式取得に動き、日本側は反発。事実上の日中争奪戦になっていた。」としています。また、「平時はもっぱら物流拠点で使われている港湾も、中国が運営に影響力を行使すれば「軍事転用のリスクがある」(政府関係者)。実際、スリランカで中国企業が運営する港湾には2014年秋、中国の潜水艦が寄港し、周辺国に衝撃が広がった。」と指摘しています。
 こうした中で、JICAは、IPOで戦略的投資家として新規発行株式の54%を取得し、カンボジア経済財政省(出資比率:75.0%)に次ぐ第2位株主(出資比率:13.5%)となりました。更に、神戸を中心として、港湾運送業・倉庫業・重量物運搬等を行っている日本企業である上組は、6月8日に、新規株式公開においてシアヌークビル港湾公社の議決権付発行済株数の約2%を取得したと発表しました。
 シアヌークビル港は、カンボジア経済にとって欠くことのできない重要港湾であり、中国の野心によって、その活動が歪められるとすれば、カンボジア経済だけでなく、カンボジアに進出している日系企業にとっても重大な事態となりかねません。シアヌークビル港では、現在、日本からの円借款で多目的ターミナルの建設が進められており、更に、新コンテナターミナルの建設計画もJICAの調査が進んでいます。シアヌークビル港の今後の動向には注目が必要と見られます。

日本経済新聞の記事
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS07H14_X00C17A6EA2000/?n_cid=kobetsu
JICAの新聞発表
https://www.jica.go.jp/press/2017/20170608_01.html
上組の新聞発表
https://www.kamigumi.co.jp/news/uploads/d81dee7d7b7e02cbbbf5a509a11f03e282a4698a.pdf

鈴木 博
コンサルタント

カンボジア総合研究所
CEO/チーフエコノミスト


東京大学経済学部卒。海外経済協力基金、国際協力銀行等で途上国向け円借款業務を約30年。2007年からカンボジア経済財政省上席顧問エコノミスト。2010年カンボジア総合研究所設立。日本企業とカンボジアの開発のWin-Win関係を目指して、経済調査、情報提供を行っている。

ブログ「カンボジア経済」 http://blog.goo.ne.jp/cambodiasoken


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