アジアの"いま"

鈴木 博
2022/01/26 14:22
  • Check

 1月12日、プノンペンにおいて、三上正裕特命全権大使とプラック・ソコン外務国際協力大臣との間で、新型コロナウイルス危機対応のための緊急支援を目的とした200億円を限度とする円借款「新型コロナウイルス感染症危機対応緊急支援借款(フェーズ2)」に関する交換公文の署名が行われました。式典には、フン・セン首相も臨席しました。また、交換公文に引き続き、借款契約の調印も行われました。本件は、2020年11月に供与された円借款「新型コロナウイルス感染症危機対応緊急支援借款」250億円に引き続き供与されたものです。

 今回供与された200億円の円借款は、財政支援を通じて、同国における感染拡大の抑制とともに、カンボジアの社会・経済の回復と安定及び持続的発展に寄与することが期待されます。感染拡大防止、被影響世帯・企業の救済策、経済復興策、将来の経済危機に備えた強靭性強化の対応策の実施を支援します。供与条件は、金利0.01%/年、償還期間15年という大変譲許的なものです。

 外務省では、「新型コロナウイルス感染症の世界規模での拡大及びこれに伴う経済社会活動の停滞は、人の往来やモノの流通がグローバルに進展している今日、日本を含む全ての国の経済・社会にとっても大きな脅威であり、国際社会全体が一致して取り組むべき課題です。とりわけ本円借款を通じて、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けるアジア・大洋州などの途上国における経済活動の維持・活性化に貢献することは、日本を含む世界経済を下支えする観点からも重要です。」としています。

 米中対立激化の中で綱渡り外交を続けざるを得ないカンボジアにとって、日本は信頼できるパートナーとして重要となっています。今回の円借款の供与は、金額も大きく、タイミングも良いため、「親中国」と言われるカンボジアの中国傾斜を引き留める観点からも大きな意義があるものと見られます。

外務省の新聞発表

https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press1_000678.html

鈴木 博
コンサルタント

カンボジア総合研究所
CEO/チーフエコノミスト


東京大学経済学部卒。海外経済協力基金、国際協力銀行等で途上国向け円借款業務を約30年。2007年からカンボジア経済財政省上席顧問エコノミスト。2010年カンボジア総合研究所設立。日本企業とカンボジアの開発のWin-Win関係を目指して、経済調査、情報提供を行っている。

ブログ「カンボジア経済」 http://blog.goo.ne.jp/cambodiasoken


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA