アジアの"いま"

鈴木 博
2022/08/17 15:53
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 8月3日~6日、一連のASEAN関連外相会議に参加するため、林芳正外務大臣がカンボジアを訪問しました。

 8月4日、日ASEAN外相会議が開催されました。今回の会議では、林外務大臣とドーン・タイ副首相兼外相が共同議長を務め、日ASEAN友好協力50周年のロゴマークとキャッチフレーズが発表されました。林大臣から、日ASEAN協力について説明しました。日本はこれまで、約2300万回分のワクチン供与、3億2700万ドル以上の医療物資・器材供与、技術協力、ASEAN新型コロナ対策基金への100万ドルの拠出等を通じ、ASEAN各国の新型コロナ対策を支援しています。また、ASEAN包括的復興枠組を支持し、ASEAN各国の経済回復に寄与するため、総額27.3億ドルの財政支援円借款を供与しています。日本は、公正で透明な開発金融を通して持続可能な成長を支援していくとしています。地域・国際情勢に関しては、ミャンマー情勢、ウクライナ情勢、東シナ海・南シナ海情勢、北朝鮮問題等に関して協議されました。

 この他、林外務大臣は、ASEAN+3(日中韓)外相会議、東アジア首脳会議参加国外相会議、ASEAN地域フォーラム(ARF)閣僚会合等に参加しました。

 また、林外務大臣は、1992年から93年にかけてのカンボジアにおける国連平和維持活動の中で命を落とされた故中田厚仁氏(国連ボランティア)及び故高田晴行警視(国連カンボジア暫定機構・文民警察官)の慰霊碑に献花しました。カンボジア進出日系企業関係者との懇談等も実施されました。

 今回の一連の会議では、「世界平和の敵」という悪役は、ロシアのラヴロフ外相が背負うと見られましたが、米国のペロシ上院議長の台湾訪問で、中国が一手に悪役を引き受ける形となったと見られます。それだけでなく、ASEAN側から見ると、中国は口では激しい恫喝を繰り返すものの、結局何もできない「張り子の虎」であり、ここぞという時には頼りにならないかもしれないとの懸念を抱かせてしまったように見られます。

 日本は、カンボジアをはじめとするASEAN諸国を中国に傾き過ぎないようにするという外交目的を、中国側の失策もあってかなり達成できたのではないかと見られます。誠実な平和外交というのも、こうした時には効果を発揮するものであると実感します。

外務省の発表(林外務大臣のASEAN関連外相会議(カンボジア)出席)

https://www.mofa.go.jp/mofaj/a_o/rp/page1_001247.html

鈴木 博
コンサルタント

カンボジア総合研究所
CEO/チーフエコノミスト


東京大学経済学部卒。海外経済協力基金、国際協力銀行等で途上国向け円借款業務を約30年。2007年からカンボジア経済財政省上席顧問エコノミスト。2010年カンボジア総合研究所設立。日本企業とカンボジアの開発のWin-Win関係を目指して、経済調査、情報提供を行っている。

ブログ「カンボジア経済」 http://blog.goo.ne.jp/cambodiasoken


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