7月19日、米国のエドワード・マーキー上院議員をはじめとする議員15名は連名で、上院の外交委員会に対し、カンボジアの民主主義の後退を批判し、その是正のために制裁を課すとする「2022年カンボジア民主主義・人権法(Cambodia Democracy and Human Rights Act of 2022)」の法案を提出しました。
法案では、「カンボジアの人権侵害問題と民主主義の状況は、2017年の旧最大野党カンボジア救国党の解散以降、悪化の一途をたどっている。」とし、「野党の指導者や政府を批判した人々が次々と逮捕されている。」と指摘しています。また、選挙が公正に行われていないと批判しています。更に、カンボジアのリアム海軍基地への中国軍進出疑惑にも触れています。法案では、カンボジアの政府・軍・治安関係者で、カンボジアの民主主義を損なった者、または人権侵害に関わった者に対する米国内資産凍結や米国への入国禁止などの措置をとるとしています。
この法案に対し、カンボジア上院は7月22日に強く反発する声明を発表しました。声明では、法案は偏見に基づき、米国の地政学的利益を反映したものだとしています。また、最近の地方選挙の公正性を訴えています。
欧米は、フン・セン政権に対する厳しい批判を続けています。フン・セン政権側も、懐柔策も打ち出しているものの、中国の支援を背景に強気の立場を続けており、双方の主張は平行線をたどっていると見られます。他方、厳しい批判は、カンボジアを更に親中国に傾かせる可能性もあるとの意見も出ています。日本は我慢の外交で粘り強く働きかけを続けており、違うアプローチでカンボジアの民主化を支えていくと見られます。引き続きカンボジアの外交方針を注視していく必要があるものと見られます。
米国上院のサイト(カンボジア民主主義・人権法)
https://www.congress.gov/bill/117th-congress/senate-bill/3052/text?r=1&s=1