アジアの"いま"

鈴木 博
2020/12/29 19:30
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 12月18日、カンボジア外務国際協力省は、2021年1月1日からカンボジアから英国向けの輸出について、英国独自の特恵関税制度UNGSPが全面適用されると発表しました。12月16日に開催されたプラック・ソコン外務大臣とティナ・レッドショー英国大使との会談で確認されたとのことです。

 注目されるのは、EUが今年8月から実施している特恵関税制度EBAの一部資格停止について、1月以降、英国は引き継がないとしている点です。EUは、フン・セン政権の強権化に対する制裁措置として、2020年8月12日から特恵関税制度EBAについてカンボジアの資格を一部停止し、輸出額の2割程度を占める品目について関税を課すとしていました。英国は、EU離脱にあたり、カンボジアへの新型コロナの影響、特に縫製業の労働者のように影響に脆弱な人々に配慮して今回の決定に至ったとしています。なお、人権問題については、別途、カンボジア関係当局と定期的に話し合うこととしたいとしています。

 英国のEU離脱に伴う経過措置期間が2020年末で終了するため、開発途上国から英国への輸入については、2021年1月1日より英国独自の一般特恵関税制度(UKGSP)に移行します。UKGSPは、原則としてEUのGSP及びEBAを踏襲したものとなる模様です。UKGSPは、3つのカテゴリーに分類されます。後発開発途上国(LDC)枠組、一般枠組、強化枠組です。カンボジアは、国連の分類で後発開発途上国(LDC)に分類されているため。後発開発途上国枠組の適用を受けます。この枠組は、EUの特恵関税制度EBAと同じで、武器以外のすべての品目について、関税ゼロ・数量枠無しでの輸入を認めています。なお、原産地規則については、EUの基準を準用するとしています。

 今回の英国の決定についてカンボジア側は歓迎しています。EUの制裁については、やむを得ないところもあるものの、新型コロナの影響の最中に実施したことについては様々な意見が出ていたことも事実です。今回の英国の決定は非常に順当なものであると見られます。カンボジアにとっては、大きな外交的勝利ともいえるものですが、英国とは引き続きしっかりとした対話を続けていく必要があるものと見られます。なお、EUがカンボジア産のコメに対して課しているセーフガード関税については今回の発表には含まれませんでしたが、こちらも引き継がれないことが期待されます。

カンボジア外務省の発表(英文です)

鈴木 博
コンサルタント

カンボジア総合研究所
CEO/チーフエコノミスト


東京大学経済学部卒。海外経済協力基金、国際協力銀行等で途上国向け円借款業務を約30年。2007年からカンボジア経済財政省上席顧問エコノミスト。2010年カンボジア総合研究所設立。日本企業とカンボジアの開発のWin-Win関係を目指して、経済調査、情報提供を行っている。

ブログ「カンボジア経済」 http://blog.goo.ne.jp/cambodiasoken


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