日本における政策に危機感を募らせた、特に中小、零細企業のタイ進出が加速しているが、タイ当地では、その数に反比例する形で、工業用地、工場物件、労働力不足の問題に直面している。特に深刻なのは労働力で、目下、タイは失業率0%間近と言われるレベルである。
労働者は、国家事業である治水工事に大きく流れたり、田舎に一時帰省後、気が変わり工場等には戻らず農業に再従事する人が増えている。それが統計数字に反映し、目下、就業者数は前年同月比で10万人増加、農業就業者は1646万人(前年同月比43万人増)、非農業は2308万人(同33万人減)となっている。
隣国からの出稼ぎ労働者も増えてはいるが、一度帰省すると戻ってこないケースも多く、今後進出される企業は、隣国に比べ高水準な賃金による労働力確保が急務となり、特に労働集約型産業は厳しい条件に直面していると言える。また、現地への権限移行化やスピード感のある経営意思決定なくしては、良い人材も集まらないだろう。
タイは今まさに、高度技術・付加価値をもった企業及び事業の積極誘致、奨励付与だけでなく、タイ中小企業の海外投資促進の政策へも舵を切り始めている。“タイへ進出”から、“タイが進出”へと時代は変わりつつあるようだ。