アジアの"いま"

鈴木 博
2022/04/27 12:48
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 4月12日、ASEAN+3マクロ経済調査事務局(ASEAN+3 Macroeconomic Research Office:AMRO)は、ASEAN+3地域経済見通し2022年版を発表しました。AMROは、この地域の経済・金融の監視・分析を行うとともに、ASEAN+3(ASEAN10か国と日本、中国、韓国)による外貨融通の取り決め「チェンマイ・イニシアティブ(CMIM)」の実施を支援するために設立された国際機関です。

 AMROは、今回の見通しで加盟13カ国の経済が回復傾向にあると見て、GDP成長率見込みを2021年5.9%(前回10月予測6.1%)、2022年4.7%(同5.0%)、2023年4.6%と予測しました。ASEAN10か国では、2021年2.9%(同2.7%)、2022年5.1%(同6.6%)、2023年5.2%と見ています。AMROでは、ワクチン接種がこの地域では進展しているため、国境の更なる開放と強い経済回復が期待されるとしています。また、ロシアのウクライナ侵攻はリスクとはなっているが、ASEANとの関係は深くないため、資源価格上昇による影響等に限定されると見ています。米国の金融緩和の終了は、金利上昇や資本流出、金融市場の動揺等を招く懸念があると指摘しました。

 カンボジアについては、成長率を2021年2.9%(同2.8%)、2022年5.2%(同6.6%)、2023年6.1%と予測しています。製造業の堅調な輸出や高いワクチン接種率に支えられて経済は回復に向かうとしていますが、新型コロナの影響を厳しく受けている観光セクターの回復には時間がかかると見ています。物価上昇については、2021年2.9%、2022年5.0%、2023年3.7%と国際的資源価格の上昇等の影響を受けると予測しています。対外収支については、経常収支の赤字(対GDP比)は、2021年には約40%にまで悪化しましたが、外貨準備は2021年末には203億ドル(輸入の7.9か月分)と非常に安定的なレベルにあるとしています。政府部門は、新型コロナ対策で巨額の財政支出を行ったため、2021年の赤字はGDP比9.2%に達しました。しかし、日本等の支援により公的債務はGDP比34.6%と問題ないレベルに留まっています。

 カンボジア経済のリスクとしては、新型コロナ変異株の流行、不良債権比率の悪化、財政赤字拡大による財政出動余力の低下等を挙げています。

 AMROとCMIMは、アジア通貨危機の際の国際通貨基金(IMF)の対応が失敗続きであったために、日本が主導して設立したアジア版IMFです。2016年の設立協定発効以降、活動を本格化しており、アジアの視点に立った経済分析・監視を実施しています。

ASEAN+3マクロ経済調査事務局の発表(英文です)

https://www.amro-asia.org/asean3-regional-economic-outlook-2022-2/

鈴木 博
コンサルタント

カンボジア総合研究所
CEO/チーフエコノミスト


東京大学経済学部卒。海外経済協力基金、国際協力銀行等で途上国向け円借款業務を約30年。2007年からカンボジア経済財政省上席顧問エコノミスト。2010年カンボジア総合研究所設立。日本企業とカンボジアの開発のWin-Win関係を目指して、経済調査、情報提供を行っている。

ブログ「カンボジア経済」 http://blog.goo.ne.jp/cambodiasoken


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