アジアの"いま"

鈴木 博
2023/10/18 13:50
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 10月4日、ASEAN+3マクロ経済調査事務局(ASEAN+3 Macroeconomic Research Office:AMRO)は、ASEAN+3地域経済見通し四半期改訂版」(Quarterly Update of the ASEAN+3 Regional Economic Outlook)を発表しました。AMROは、この地域の経済・金融の監視・分析を行うとともに、ASEAN+3(ASEAN10か国と日本、中国、韓国)による外貨融通の取り決め「チェンマイ・イニシアティブ(CMIM)」の実施を支援するために設立された国際機関です。

 今回の改訂版見通しでは、来年にかけて世界芸材の停滞が見込まれる状況下での2023年~2024年の見通し等について分析しています。

 AMROは、今回の見通しで2023年の加盟13カ国のGDP成長率見込みについては、前回(7月)予測から引き下げました。ASEAN+3では、2023年4.3%(前回7月予測4.6%)、2024年4.5%(同4.5%)、ASEAN10か国では、2023年4.4%(同4.5%)、2024年5.0%(同5.1%)と見ています。カンボジアについても若干引き下げ、2023年5.3%(同5.7%)、2024年6.2%(同6.2%)としています。ASEAN主要国については、2023年は回復傾向にあるとして、タイ3.5%、フィリピン5.9%、シンガポール1.0%、マレーシア4.2%、インドネシア5.0%、ベトナム4.7%等と予測しています。カンボジアの成長率は、ASEAN10か国の中ではフィリピンに次いで第2位となっています。

 ASEAN10カ国の物価上昇率予測は2023年8.2%(前回7.8%)と引き上げました。カンボジアについては2.3%(同2.8%)に引き下げています。中国から多額の債務を背負ってしまい、債務の罠に陥ったラオスの物価上昇率予測(2023年)が30.0%と高く、厳しいインフレに襲われていることが目を引きます。

 AMROでは、中国の国内需要の回復や米国の消費回復に支えられて、ASEAN諸国からの輸出が来年は延びるものと期待を示しています。主なリスクとしては、欧米の金融引締めの長期化による景気後退、食料やエネルギー等の一次産品価格の再度の高騰をあげています。

 AMROとCMIMは、アジア通貨危機の際の国際通貨基金(IMF)の対応が失敗続きであったために、日本が主導して設立したアジア版IMFです。2016年の設立協定発効以降、活動を本格化しており、アジアの視点に立った経済分析・監視を実施しています。

AMROの新聞発表(英文です)

https://amro-asia.org/amro-maintains-asean3s-2024-growth-forecast-warns-on-inflation/

鈴木 博
コンサルタント

カンボジア総合研究所
CEO/チーフエコノミスト


東京大学経済学部卒。海外経済協力基金、国際協力銀行等で途上国向け円借款業務を約30年。2007年からカンボジア経済財政省上席顧問エコノミスト。2010年カンボジア総合研究所設立。日本企業とカンボジアの開発のWin-Win関係を目指して、経済調査、情報提供を行っている。

ブログ「カンボジア経済」 http://blog.goo.ne.jp/cambodiasoken


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