アジアの"いま"

鈴木 博
2023/07/26 11:58
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 7月11日、ASEAN+3マクロ経済調査事務局(ASEAN+3 Macroeconomic Research Office:AMRO)は、ASEAN+3地域経済見通し四半期改訂版」(Quarterly Update of the ASEAN+3 Regional Economic Outlook)を発表しました。AMROは、この地域の経済・金融の監視・分析を行うとともに、ASEAN+3(ASEAN10か国と日本、中国、韓国)による外貨融通の取り決め「チェンマイ・イニシアティブ(CMIM)」の実施を支援するために設立された国際機関です。

 今回の改訂版見通しでは、ロシアによるウクライナ侵略、世界的なインフレと金融引き締めといった状況下での2023年~2024年の見通し等について分析しています。

 AMROは、今回の見通しで2022年の加盟13カ国のGDP成長率見込みについては、前回(4月)予測を維持しました。ASEAN+3では、2023年4.6%(前回4月予測4.6%)、2024年4.5%(同4.5%)、ASEAN10か国では、2023年4.5%(同4.9%)、2024年5.3%(同5.2%)と見ています。カンボジアについても若干引き下げ、2023年5.7%(同5.9%)、2024年5.3%(同5.2%)としています。ASEAN主要国については、2023年は回復傾向にあるとして、タイ3.9%、フィリピン6.2%、シンガポール1.3%、マレーシア4.2%、インドネシア5.0%、ベトナム4.4%等と予測しています。

 ASEAN10カ国の物価上昇率予測は2023年7.8%(前回5.7%)と大きく引き上げました。カンボジアについては2.8%(同3.3%)に引き下げています。

 AMROでは、先進国の経済活動は底堅い、世界の銀行システムのストレスが2023年3月以降緩和している、一次商品価格が予想を下回っていること等から、ASEAN+3地域の成長見通しに対するリスクが前回より全体として低下していると分析しています。主なリスクとしては、欧米の景気後退、中国の経済減速、米国の金融引締めの影響、一次産品価格の高騰、米国と中国の経済的デカップリングをあげています。

 AMROとCMIMは、アジア通貨危機の際の国際通貨基金(IMF)の対応が失敗続きであったために、日本が主導して設立したアジア版IMFです。2016年の設立協定発効以降、活動を本格化しており、アジアの視点に立った経済分析・監視を実施しています。

AMROの新聞発表(英文です)

https://www.amro-asia.org/asean3-growth-momentum-to-remain-intact-as-risks-recede/

鈴木 博
コンサルタント

カンボジア総合研究所
CEO/チーフエコノミスト


東京大学経済学部卒。海外経済協力基金、国際協力銀行等で途上国向け円借款業務を約30年。2007年からカンボジア経済財政省上席顧問エコノミスト。2010年カンボジア総合研究所設立。日本企業とカンボジアの開発のWin-Win関係を目指して、経済調査、情報提供を行っている。

ブログ「カンボジア経済」 http://blog.goo.ne.jp/cambodiasoken


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