アジアの"いま"

鈴木 博
2021/10/20 11:49
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 10月7日、ASEAN+3マクロ経済調査事務局(ASEAN+3 Macroeconomic Research Office:AMRO)は、ASEAN+3地域経済見通し2021年10月改訂版を発表しました。AMROは、この地域の経済・金融の監視・分析を行うとともに、ASEAN+3(ASEAN10か国と日本、中国、韓国)による外貨融通の取り決め「チェンマイ・イニシアティブ(CMIM)」の実施を支援するために設立された国際機関です。

 AMROは、今回の見通しで2021年の加盟13カ国のGDP成長率見込みを3月の予測から更に引き下げました。デルタ変異株の感染拡大等、新型コロナの影響が予想以上だったためとしています。ASEAN+3では、2021年6.1%(前回予測6.7%)、2022年5.0%(同4.9%)、ASEAN10か国では、2021年2.7%(同4.9%)、2022年6.6%(同6.1%)と見ています。カンボジアについても2021年は大きく引き下げ2.8%(同4.7%)としましたが、2022年は6.6%(同6.1%)に回復すると予測しています。ASEAN主要国も2021年成長率予測は概ね引き下げられ、タイ0.8%(同2.3%)、フィリピン4.3%(同6.9%)、シンガポール6.3%(同6.0%)、マレーシア4.1%(同5.6%)、インドネシア3.8%(同4.9%)等となっています。なお、物価上昇率は、ミャンマーでインフレが懸念される(2021年6.7%、2022年12.4%)以外は、概ね問題なく、カンボジアについても2021年3.3%、2022年2.3%と予測しています。

 AMROでは、回復への道はワクチン接種の進展が鍵となると指摘しています。ワクチン接種の進展により、旅行もサンドボックス方式等により再開されていくと期待を示しています。リスクとしては、ワクチン耐性があるウイルス変異株の出現等により新型コロナの影響が長引くことをあげています。

 AMROとCMIMは、アジア通貨危機の際の国際通貨基金(IMF)の対応が失敗続きであったために、日本が主導して設立したアジア版IMFです。2016年の設立協定発効以降、活動を本格化しており、アジアの視点に立った経済分析・監視を実施しています。

AMROの新聞発表(英文です)

https://www.amro-asia.org/recovering-from-covid-19-transiting-smoothly-from-pandemic-to-endemic-new-normal/

鈴木 博
コンサルタント

カンボジア総合研究所
CEO/チーフエコノミスト


東京大学経済学部卒。海外経済協力基金、国際協力銀行等で途上国向け円借款業務を約30年。2007年からカンボジア経済財政省上席顧問エコノミスト。2010年カンボジア総合研究所設立。日本企業とカンボジアの開発のWin-Win関係を目指して、経済調査、情報提供を行っている。

ブログ「カンボジア経済」 http://blog.goo.ne.jp/cambodiasoken


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