アジアの"いま"

鈴木 博
2022/12/06 16:20
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 11月11日~13日、プノンペンでASEAN 首脳会議(サミット)が開催されました。プノンペンは厳戒態勢となりました。他方、プノンペン市内は様々な飾りつけが行われ、夜はライトアップされていました。

 議長国カンボジアのフン・セン首相は閉幕式後の記者会見で「実質的な成果があった」と述べています。フン・セン首相は、閉幕後の記者会見で「広範で重要なテーマについて建設的な議論ができた」と述べ、安全保障や気候変動など100の分野で合意に至ったとしています。
 クーデターで国軍が全権を掌握したミャンマー情勢を巡っては、参加国間で意見の隔たりも目立った模様です。ミャンマー問題について、フン・セン首相は、ミャンマーのASEAN関連会議への復帰は「国軍の対応次第だ」と述べました。ASEAN側がミャンマー国軍に求めている暴力停止などについて、具体的な履行期限の設定で合意できませんでした。会議終了後に発表された文書では、昨年4月に合意した暴力停止や、当事者間の対話の開始などの5項目について「ほぼ進展がない」と明記されており、その履行計画の策定は外相による協議に委ねられた形です。

 米中の対立激化については、フン・セン首相は、ASEANはどちらの側に付くという選択をするつもりはなく、また両国からもその必要はないと言われていると明かしました。しかし、台湾情勢や東シナ海・南シナ海での中国の動きについては、多くの国が懸念を示しました。米国は、トランプ政権時代から、バイデン政権で政策を転換しアジア重視を打ち出しており、今回の一連の会議では、日本等の同盟国と共に存在感を示したものと見られます。

 今回の首脳会議で、東ティモールのASEAN加盟を認めることで基本合意しました。実現すれば1999年のカンボジア以来の新規加盟国になり、ASEANは11カ国となります。ASEANは7月に代表団を東ティモールに派遣し、加盟に向けた準備状況を調査していました。首脳会議後に公表した東ティモールに関する声明では「11番目の加盟国になることを原則として認める」と明記しました。加盟時期は明示されなかったものの、2024年以降となると見られます。

鈴木 博
コンサルタント

カンボジア総合研究所
CEO/チーフエコノミスト


東京大学経済学部卒。海外経済協力基金、国際協力銀行等で途上国向け円借款業務を約30年。2007年からカンボジア経済財政省上席顧問エコノミスト。2010年カンボジア総合研究所設立。日本企業とカンボジアの開発のWin-Win関係を目指して、経済調査、情報提供を行っている。

ブログ「カンボジア経済」 http://blog.goo.ne.jp/cambodiasoken


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