毎年、日本への留学を間近に控えたタイ人学生に対して、ビザ申請や入国の流れ、日本で生活を始める上での注意点などを案内するオリエンテーションを実施している。先日も、2013年4月に日本へ留学する学生とその父兄約200名を集めて開催した。私はいつも冒頭の挨拶をしているのだが、この場で皆の健闘を祈ると共に、ひとつ必ず伝えているメッセージがある。
それは、『在タイの日系企業を現地化して欲しい!』ということである。
タイにある定型的な日系企業は幹部が日本からの駐在員で占められ、その下にタイ人従業員が配置される構造となっている。これではタイ人がいくら頑張っても日本人がいる階層の役職にはあがれない。目に見えるグラスシーリングが立ちはだかっているのである。
責任があり、給料の高い仕事は日本人でまわし、その他の雑用をタイ人が行う。せっかく日本留学経験を積んできた人でさえ、駐在員の秘書兼通訳として従事し、ある程度経験を積んだ頃には駐在員の入れ替えによってまた仕事内容は振り出しに戻る。
私は日本留学を奨励し、多くのタイ人学生を日本へ送り出している立場として、彼らを待っている将来が前述のようなものであることにやるせなさを感じている。
タイ人も皆薄々気づいている。日系企業で働くことは、余り魅力的ではないということを…。それでもまだ学生は望みを捨てず、空想で美化した日系企業を夢見て頑張る。
日本語ができるタイ人にとって、日系企業の初任給は魅力的なものである。それは確かだ。しかし、教育も受けられない、責任も与えられない、偉くもなれない。生涯賃金を考えた場合、果たして日系企業で働き続けることが正しい選択なのかどうか、甚だ疑問である。
ではどうすれば良いのか? いま私たちの立場で出来ることは、とにかく多くの日本留学生を生みだし、日本留学経験を持つ人材を労働市場に過剰な程に供給することである。それにより、タイ国内における日本留学経験者の希少価値は下がり、留学経験者の中での競争が激化する。そしてそこで勝ち残ってきたものたちは、日系企業が認めざるを得ない優秀な人材となっているはずである。そうやって日本人がついているポストに、徐々にタイ人が置かれるようになる。
しかしここで1つ大きな問題がある。欧米諸国への留学ではなく、あえて日本留学を選択する学生の数はたかが知れているということだ。もっともっと数を増やすためには、最終的に恩恵を蒙る日系企業に、もっともっとタイ人学生のための留学費用を含めた教育費を肩代わりしてもらえるよう意識を高めていくことが重要だろう。このままでは、いつまでたっても駐在員が社内で権勢をふるい、ガラスの篭城を築き上げ、優秀なタイ人留学経験者の行く手を阻む。誰も日系企業で働かなくなる日が来てしまう前に、動き出さなければいけないのである…。
<img class="size-medium wp-image-1997 online slots casino online online casino ” alt=”在タイ日系企業の組織図イメージ(オリエンテーションで使用しているスライドより)” src=”http://thai-plusone.asia/wp/wp/wp-content/uploads/lhi_20130419b-300×164.gif” width=”300″ height=”164″ /> 在タイ日系企業の組織図イメージ(オリエンテーションで使用しているスライドより)