先月24日、インラック首相が関係者数名を引き連れ、治水事業にも精通しておられる国王に面会し、現在までに纏めた政府案の説明を行おうとした。
その冒頭、国王陛下は
“今回の大洪水の原因は人々の強欲である。即ち、山林の伐採が強欲な関係者で行われ、復旧が困難な大切な森林が破壊された。このお咎めは、一部関係者の国家公務員と強欲でお金を欲しがる人々に課さねばならない。政府はもっと植林に注力すべきで、且つ、今回の違法な行為により問題を引き起こした、強欲な国家公務員、官僚、民間人を厳しく罰しなければならない”
と厳しい表情、文言でご意思を伝えられた。
今回の大洪水の直接の原因となった、ダムの水門の開閉権を持つ人々に言及して欲しかったと感じるが、それでは人が特定されてしまう為、森林伐採の一般論で、お気持ちをお述べになったのではと感じている。
インラック首相は、今回自分が巡回した被災7県の状況を説明すると共に、今後の改善案の説明を行った。
国王陛下は、タイ北部、中部並びに南部で、無秩序で違法な伐採が行われている事に再度懸念を示され、洪水は一旦起こるとなかなか水が海に流れず、多くの住民が長期間、耐乏生活を強いられる。二度と起こしてはならぬ事を肝に命じよ、と仰せになった。
更に、今まで自分が考えて来た、数件の治水計画を披露された。また植林に際しては、早く育つ木は伐採も早くなる。遅く育つ木は時間は掛かるが、伐採も遅くなり、洪水対策には有効である。これ等を如何に組み合わせて植林するかが重要であるとも説かれた。
久々にお聞きする国王陛下の厳しいお言葉であったし、治水には大きな関心をお持ちで、予てより自論を展開して来られた事が良くわかる出来事であった。
今回の政府案は1955年に国王が提唱された案にかなり近いものになっているようである。日本の天皇制とは全く異なる、タイ王国のあり方が理解出来る会見であった。