アジアの"いま"

辻本 浩一郎
2012/04/13 08:57
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先月の話であるが、インラック首相が就任後初となる日本への公式訪問を4日間の日程で行い、当地新聞の一面には、笑みを湛えた日タイ両首脳の写真が大きく掲載された。日本政府からは、洪水に対する今後の対策だけでなく、昨年の洪水発生時の対応の遅さや情報の不足にも言及されたようであるが、インラック首相は昨年のような洪水被害は二度と起こさぬと自信の程を披露したようだ。

 

また、洪水対策のために支援について日本政府からの提案も為されたようであるが、インラック首相としては「今回の洪水は治水事業をやりたい人々が人為的に起こした事であり、さらには、洪水により景気にブレーキが掛かった事を歓迎する勢力もあり、タイの本根は、海外からの投資はすでに十分来ているのだから、目下の懸念はむしろ人材不足という段階に来ているのよ…」、と言いたかったであろうと想像している。事実、洪水特需でかなり潤っている企業も多数あるわけだが、日本政府はこのような点、理解しているのかとの疑問を持った対応であった。日系企業がタイでどれだけの利益を享受しているか計算した事があるのかとも問いただしたい気持ちである。

 

今回の洪水により多くの日系企業が被害を被ったことは事実で、これに対して謝罪をし、「二度と起こさぬ」と宣言する事は当然訪日の最重要イベントであったとは思うが、心底謝罪しているのか否かは疑わしいところと思っている。

 

日本側の対応にも驚きを禁じ得ない。日系企業の業績にかなりの貢献をしてくれているタイから首相が来日したというのに、日本のマスコミ報道がほとんど無い。これではとても日本政府が望んでいる“アセアンの盟主”などになる事は夢物語と感じる。本当にこれで日本の将来の安定や安全は確保できるのであろうか疑問を感じてしまう。

辻本 浩一郎
コンサルタント

M&A Advisory Co., Ltd.
Executive Manager


バンコク在住14年、タイにおける日系企業のビジネスを、進出支援全般を含め、特に法務、労務、会計・税務の面でコンサルティング、サポートしている。

M&A Group : http://www.m-agroup.com/


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