1か月ほど前の話になるが、11月8日のタイにおける新聞各社の紙面はオバマ大統領の再選一色で埋まった。その報道紙面の大きさに驚きを禁じ得ない一方で、過去に報道された日本の首相交代時の記事の小ささを思い出し、経済面では圧倒的な貢献をしている日本企業群なのに、政治となるとなぜこうなってしまうのか、大変残念な気分になった。
そのオバマ大統領が再選後に最初に訪問した国がここタイである。ミャンマーに行くついでとの感もしていたが、その評判を予知してか、タイを最初に選んだのはアクシデントでは無いと、その重要性をコメントした。タイにとっては大変光栄な事である。
1,000人規模の米人警護団、飲料水は全て米国より持参、10匹程度のジャーマンシェパードによる巡視等々、話題には事欠かなかったようだが、政府迎賓館前の庭に置かれている100年以上も前の大砲の中をオバマ大統領がのぞき込むシーンは面白おかしく報道されたりもしていた。
インラック首相との会談に先立ち、オバマ大統領はシリラート病院にご入院中のプミポン国王陛下を訪問され、にこやかに談笑されるお姿が嬉しく報道された。インラック首相は、その会食の席で舞い上がったのか、席を立つときにナフキンをボタンの穴に挿したまま立ち上がった様で、マスコミから面白おかしく大きく取り上げられた。
風刺マンガでは、AIR FORCE ONEに乗り込もうとするオバマ大統領の足に縋りつき、“オバマ!私を置いてスー・チーさんの所に行かないで”とか、“私とスー・チーさんどちらが魅力的?”と、問いかけるものなどが出ていたが、TV報道等を見ていると、オバマ大統領とスー・チーさんの貫禄なのか、この二人には他を全く寄せ付けない何かを感じさせるものがあった。
オバマ大統領の訪タイに対する、タイからのお土産はTPPへの正式な参加表明となった。過去において、米国に対する特定国優遇策が違反であるとWTOから指摘され、その対応策としてFTAの締結に向かったが、米国製薬会社の強い圧力により特許期間の延長を迫られ、これでは安価な薬を国民に供給出来なくなるとして頓挫した経緯がある。今回はその復活交渉となる。
TPPが締結されると、米国が強い金融、運輸、通信等の分野でもタイ進出が強まる事が予想され、且つ日本同様、農業関係者からの強い不安感もあり、今後インラック首相がいかなる指導力を発揮して締結にこぎ着けるのか、注目が集まる事になる。やはり今後の中国の脅威を考えると、締結やむなしとの大人の結論になると思っている。