毎年、この時期から急激にタイは暑くなるが、同時にタクシン氏の話題でも熱くなるのが近年恒例となってきている。エイプリルプールには、タクシン死亡説が流れたが、同氏はTwitter で「自分は生きている。噂は噂、いちいち目くじらは立てないし、年に1度の嘘はずっと嘘を付くよりマシである Ha ha ha」と悪質な(?)噂を笑い飛ばした。また、一方、同氏の長男は「今月行われる北部チェンマイ県の国会議員補選に立候補するのは、ヤオワパー(元首相の妹)ではなく、タクシン氏(父親)だ」と書き込み、これまたセンスのないジョークで人々を呆れさせた。
なんとも平和な時間が流れ、経済成長に沸くタイである。06年のクーデター、08年の空港占拠、09年のASEAN首脳会合中止、10年の黄組VS赤組の大規模衝突、11年の大洪水と話題に事欠かなかったタイであるが、昨今は、国内対立は小康状態を続け、国家としての比較的安定さが持続的経済成長に連動していると言えよう。しかしながら、黄組VS 赤組の政治的対立については、根本から何一つ解決には至っていない。
「タクシン氏の帰国実現」に向け疾走する与党は、クーデター後に成立した07年憲法の改正に躍起で、特に目障りとする憲法裁判所の強力な権限を剥奪・縮小させる憲法改正案を提出、国会における法案審議をスタートさせた。法案はすでに第1読会を通過し、逐条審議の「第2読会」に進むことになったが、クーデター後の政治犯に恩赦を与える法案含め、「タクシン氏の帰国実現」に向けた種々の動きが今後のタイの行く末を二分すると言っても過言ではないほど、くすぶり続ける根深い火種が未だタイには存在する。
一方、インラック首相はタクシン氏の帰国実現に触れることなく、また政治的対立に関与、言及することなく、任期全うに向け、無難且つ堅実に国家の舵取りをしており、国民も消極的に支持をしているようである。「何もしていない」と批判されてはいるが、当初掲げた社会構造改革に向けた具体的政策の遂行と実現に期待したいと思う。