アジアの"いま"

辻本 浩一郎
2013/08/06 05:43
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10年前、タクシン氏が政権の座に就いたとき、政府の目玉商品のひとつとして、外国の富裕層を狙った「タイランド・エリート・カード」なる会員券を100万バーツで販売した。外国人にとっては超優遇された会員券であったため、飛ぶように売れるかと思いきや、結局のところ数千枚程度の販売に終わった。

 

当然のことながら大赤字となり、この恩恵に浴せないタイ人からは絶えず批判の対象となっていた。その後、アピシット政権になってから、全額払い戻しにより会員券を廃止に持ち込もうとしたのだが、購入先の40カ国からの訴訟も心配の種となり躊躇した。最終的には廃止を決断したものの、時すでに遅くアピシット氏は政権の座を失っていた。

 

そして、タクシン氏の実妹インラック首相でさえも、この赤字を懸念して廃止の方向を打ち出したのだが、これにタクシン氏が激怒。結局のところ、価格を200万バーツに値上げ、新たに年会費20万バーツを徴収、会員特典も若干変更し、再度売り出す事が先月決定された。

 

紆余曲折があった「新タイランド・エリート・カード」だけに、当局は10年間で1万人の新規会員を募るとしているが、楽観視は許されない状況と感じると同時に、未だに影響力絶大なタクシン氏の影をここにも見る。

辻本 浩一郎
コンサルタント

M&A Advisory Co., Ltd.
Executive Manager


バンコク在住14年、タイにおける日系企業のビジネスを、進出支援全般を含め、特に法務、労務、会計・税務の面でコンサルティング、サポートしている。

M&A Group : http://www.m-agroup.com/


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