10年前、タクシン氏が政権の座に就いたとき、政府の目玉商品のひとつとして、外国の富裕層を狙った「タイランド・エリート・カード」なる会員券を100万バーツで販売した。外国人にとっては超優遇された会員券であったため、飛ぶように売れるかと思いきや、結局のところ数千枚程度の販売に終わった。
当然のことながら大赤字となり、この恩恵に浴せないタイ人からは絶えず批判の対象となっていた。その後、アピシット政権になってから、全額払い戻しにより会員券を廃止に持ち込もうとしたのだが、購入先の40カ国からの訴訟も心配の種となり躊躇した。最終的には廃止を決断したものの、時すでに遅くアピシット氏は政権の座を失っていた。
そして、タクシン氏の実妹インラック首相でさえも、この赤字を懸念して廃止の方向を打ち出したのだが、これにタクシン氏が激怒。結局のところ、価格を200万バーツに値上げ、新たに年会費20万バーツを徴収、会員特典も若干変更し、再度売り出す事が先月決定された。
紆余曲折があった「新タイランド・エリート・カード」だけに、当局は10年間で1万人の新規会員を募るとしているが、楽観視は許されない状況と感じると同時に、未だに影響力絶大なタクシン氏の影をここにも見る。