先月の話であるが、インラック首相率いる新閣僚が、緊張した面持ちでプミポン国王陛下の前に整列する写真が新聞の一面を飾った。2011年8月に発足したインラック政権であるが、第5回目となる内閣改造を断行した。しかも、今回は18のポストが入り代わり、11人の新閣僚が入閣するという話題豊富な大型改造であった。
一番の注目は、いつもその発言で物議を醸す大物議員、チャルーム氏の降格人事である。同氏はいつもNo.2のポジションを占めて来たが、南部での治安秩序の回復に注力しなかった為か、首相と波長が合わぬ為か、副首相、治安担当より労相に格下げされた。
直前まで、この移動を知らされていなかったのか、同氏は激怒、周囲に当り散らし、記念撮影や国王の前での承認式を欠席した。
新任務の労相として記者会見し、“自分は麻薬密輸ルートで成果を上げつつあったのに残念である。南部の件を言われたのは昨年11月で、その後十分なるスタッフ揃えを画策中であった。今回の人事でインラック首相の取り巻きはアイスクリームギャングの様な集団になった。首相は防波堤を失い、今後は荒波を被る恐れあり”と気炎を上げた。今後の閣内での同氏の言動に大きな注目が集まっている。
次に目を引くのが、首相が国防相を兼務した事である。警察は自己の腹心で固めたと考えたか、今度は問題の軍部の掌握に取り組み出した。近々行われる軍部の高官人事にこれまた注目が集まる。女性が軍部のトップに就くのは異例中の異例と感じている。
三番目は、コメ担保融資制度に絡む膨大な損失や横流し等の不正疑惑等で騒がれている商業相の交代である。政権の基盤を揺るがし兼ねないこの事態に至っても、これに満足な答弁、対処が出来なかったことが原因であろう。
一方、この人事に収拾がつかない気配となっているのが赤組である。即ち、現政権誕生時には、大いに功績があったと自認しているのに、今回も赤組幹部は誰ひとりとして閣僚に登用されなかった。彼等は、“白仮面のデモも多発して来た。我々を評価する態度を具体的に示さねば、政権の基盤は怪しくなるぞ”との脅しを始めた。
インラック首相はどの様に彼等を宥めるのか、特とその手腕を眺めて見たい。何れにせよ、これ等全ての人事は、タクシン氏了承の元に行われたと大半の人々は感じているようだ。。。