インラック政権は早いもので3年目に突入した。前回も述べたタイ著名社会批評家は、タクシン氏だけでなく、インラック首相についても “いつもオシャレできれいにしている若い女性であるが、何事にも気楽で深刻さがない” という評価をしている。首相の存在感は相変わらず薄く、これといって目立った成果はないが失策も少なく、軍との関係も良好であると言えよう。この安定状況が続く限り、民主党は、恩赦法案等でいくら反発をしても次回の選挙で勝利して政権の座に返り咲くことは難しいであろう。
近頃のインラック首相の外遊には、多くの有名企業経営者も同行し、民間と政権との距離は近くなっている。アピシット氏はこれまでのようなスマートな闘い方ではスポンサー離れも続き、資金不足に陥ることは明白である。それを悟ってのことか否か、過激な言葉を使うようになったり、また黄色組との距離を置きはじめたと思えば、途端に民主党のお膝元であるタイ南部の天然ゴム農家が政府に対する高値買取を要求するデモを起こした。民主党の議員が南部各地で農家を煽ったり、デモ参加者への支援を行ったと言われても仕方がないあからさまなタイミングであった。
民主党は従来の支持層ではなく、過激な大衆に向けてアピールし、デモによって一挙に政権を打倒する道を選んだのだろうか? 大衆運動路線を進めることで、かつての空港占拠事件や大規模衝突のような国家を揺るがす大事件が起こることはなんとしても避けなければならない。