タイのワーカー(労働者)の圧倒的なコスト安は日本にとって脅威である。
しかし、2012年4月1日に大きな動きが…
ムアントンターニー・インパクトアリーナ
タイで製造業を行う上で見過ごせないのは、労働者の賃金である。賃金とは言っても、タイではいくつかのタイプの人的コストが発生する。そのタイプと各賃金をご紹介したい。
・ワーカー(工員/熟練工・非熟練工があり)
製造業、特に機械化されていない、若しくは、機械化しにくい業種であれば、なおさら人海戦術による生産が必要になる。日本で100名のワーカーを雇っていれば相当大きい工場になるが、タイではそれが300人、500人以上と多くの従業員数が必要になる。
バンコク地域の最低賃金は、215B(一日8時間労働として)となっている。約570円である。(1B=2.65円にて計算)ひと月にすると17000円になる。これが最低賃金で、現実には各種手当や残業などもあり、1名あたり月に2~3万円くらいの支出となる。
・エンジニア(4大理工系学部卒業)
タイの工場の現場では、実質的な知識や技術を持っているのは、4大理工系卒のエンジニアになるので、運営上エンジニアは欠かせない。
しかし、単に頭数がそろっていればよいワーカーと違い、コストは段違いにかかる。
新卒で、月に1.2万B(約3.2万円)くらいの支出になる。業務に慣れてきた人材であると、簡単に2万、3万B(約5.3万~8万円)と賃金が跳ね上がるので、コストとしてはかなり厳しくなってくる。
・オフィススタッフ(4大ビジネス・経理系学部卒業)
工場では、ワーカーやエンジニアと言ったスタッフばかりでなく、オフィス労働者ももちろん必要になる。オフィス労働者の場合も新卒のレベルで1万B強(約2.6万円)の人件費がかかってくる。
会社である以上、経理スタッフは必須であり、会社を設立した翌日から既に経理が動き出すことになる。また、営業や、納品に当たっての出荷・在庫管理などもオフィススタッフの業務となる。
2012年4月1日に最低賃金の大幅な引き上げが
従来であれば、毎年年末に2、3Bの最低賃金の引き上げがあり、物価の上昇のスピードと同じ程度の賃金上昇であったが、2012年4月1日からは、バンコク近郊6県とプーケット県にて、最低賃金が300Bになる(215→300Bである)。他県でも、軒並み30%と言う大幅な最低賃金の上昇が予定されており、縫製業を始めとして、軽工業などは、人件費の増大に耐えられない状況になってしまう。
現在では各社の動向としては、最低賃金は遵守し、また、それにスライドさせる形で給与アップになると思われる。当然、業績によって上げ幅が各社違ってくるだろうから、そのタイミングで、ストライキや、団体交渉なども出てくると思われる。どこまで動きがでるのかは、日系企業にインタビューを行なっていても蓋を開けてみなければわからない、との意見が多く、後1ヶ月。最後の調整に追われるだろう。
ただ、それでもタイへの投資環境は魅力的に映るだろう。タイ人もそこを心得ており、微妙な匙加減が非常に得意である。日和見主義と言っては言葉が悪いが、微妙なバランスを取るのは天下一品である。今回も、やりすぎれば引っ込めて、まだまだ行けると思えば、更に賃金上昇を行う。タイは第2次世界大戦では戦勝国だという事実を忘れてはならない。