アジアの"いま"

中根 雅裕
2012/04/30 08:10
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 タイで製造を行なっていく上で多くのタイ人と接する事となります。

ワーカーとして生産に携わる人、エンジニアとして製造現場の要所を押さえて指導する人、オフィスワーカーとして内勤業務を行う人など、役割は違っていても皆タイ人です。今回は、そういったタイ人従業員と接する際に注意すべき事柄について、順次述べたいと思う。

先ず、日本人が驚き、そして非常に不愉快に思う事は『時間の感覚』であると言る。

具体的はどういう事かと言うと、兎に角、酷いのは、約束の時間に来ない、業務をまじめに行わない、すぐだらけるなど、南国特有のスロー感である。タイ人はまず走らない。毎日の通勤にしても、日本人なら、来た満員電車に飛び乗り、あるいは多少押してでも乗り込み、すし詰め状態(乗車率200-250%)の不快感を我慢して会社に行くのが普通だ。どうせ、次の電車を待った所で、混んでいる事には変わりない。しかし、タイ人は乗車率150%程度であっても、つまり詰めればまだ入る様な状況でも、もうあきらめて電車を見送ってしまう。しかも、待ち合わせで人を待たせても(待っても)平気と言う、日本人感覚からすると、とんでも無い習慣(!?)の様なものがある。そもそも、タイには、「時は金なり」と言った諺もなく、「タイ人にとって時間はタダ」と言って馬鹿にする日本人も多い。(万事がこんな感じなので、例えば、早く・快適で・安全に・到着する事を目的とした新幹線など、夢のまた夢である。)

タイの工場労働者

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、これをタイ社会からの視点からみるとそれほど奇異な事ではない。タイ人があくせくしないのは、タイは温暖な気候に恵まれ、食べ物が豊富で(朝起きたら庭にフルーツが実っていると言う感覚)、稲作も下手をすると三期作も可能なくらい食糧自給率が高い国である。(140%の食糧自給率。「米」の海外への輸出は世界一。2位はベトナム。ただ、今年は逆転されて2位に転落している)つまり、あくせく働かなくても食料は十分にあり、餓死する事がないと言う背景がある。

あくせくしようにも、この暑苦しい気候の中では駆けずり回ってはぶっ倒れてしまう。それに夕方、突然のスコールで身動きがとれなくなる事も少なくない。(このスコールはまさに土砂降りと言う事がピッタリなほど、とんでも無い雨で、こんな中、外を歩けば2秒でずぶ濡れになる)ただ、こんなとんでも無いスコールも1時間もすると収まる。つまり、こういった環境の中で急ぎたくても急げなかった事情からなった習慣だと思われる。

 

 

 

 

 

 

 

こういった背景がある一方で、近年ではタイの裕福層は留学して欧米スタイルを身につけ、国は高度な技術や外国資本を取り入れて高架鉄道や地下鉄を完成させ、渋滞などの外的要因に左右されることが少なくなり、さまざまな方面での環境が変わってきたせいもあってか、中には日本人より時間に厳しいビジネスマンもしだいに増え始めているようだ。あと数年すれば、こういったスローさはなくなるのであろうか。いや、こういった目覚しい発展は今のところあくまでバンコクなど一部の都市に限ったことなので、そもそものスローなタイ人気質が一気に変化することはないのかも知れない。

さて、話を戻したい。現状では、若干のルーズさを併せ持つタイ社会の会社においては、規律の緩い会社はもとより、かなり厳しくしても大抵のタイ人は遅刻することが多い。なかには、1分遅れる毎に1B(約3円)の罰金を設定している会社もある。

日本人は、朝は大抵始業時間の前には席について準備をし、定時を過ぎてもやりかけの仕事は片付けて帰る方が多いだろうが、タイ人は、たとえ出勤は遅くても定時になればさっさと帰るのである。タイ人曰く、「日本人は時間にうるさい割に、定時になってもだらだら仕事をしている」と評価される程である。(出社の時間は正確だが、退社の時間はルーズであると評される)

日本人は、なるべく残業をしてでも業務を片付ける事を美徳としているが、タイ人は家族と過ごす時間を大切にしているので、そう映るのだろう。

ただ、工場のワーカーなどは残業代を当てにして、かなり遅くまで残業する人もおり、基本賃金体系の低い人にとっては重要な収入源である。だから、あまり残業が少ないと辞めてしまうケースもある。(特に運転手などは、日本人が夜食事をしている時間も待機させ、その待機時間が、残業代として割増で給与に跳ね返るので、多少残業させるくらいが逆に喜ばれる)

決してタイ人は勤労意欲が低い訳ではない。自営業の屋台などをやっている人などは、朝から夜遅くまで働いているケースも少なくない。

つまり、残業代が出ると言ったインセンティブや、残業する事によって納期が守られて、生産性や、顧客からの信頼を高められる事などのメリットなど、単に時間を守らせるだけではく、時間を守ると言う事はどういう事なのかを最初徹底的に指導・教育する必要がある。

今まで、そんな事を考えた事がない人達に、口うるさく言っても理解できないからだ。その為には、そこに時間をかけて説明し、納得させて、最終的にはタイ人の労働者にとってもメリットのある事を理解してもらう事はとても重要で、大切な事である。

それをしないで、「タイ人は時間を守らない」と言うのは、筋違いだ。兎角、日本人は、時間を守る事があたりまえ、社会常識となっているが、ここタイに来たからには、一旦初心に帰って振り返るくらいの気持ちの持ち様が大切と言える。

是非、気に留めてもらいたい。

では、次回は、タイ人への指導の仕方。特に注意が必要なタイ人への「叱り方」について書いて行きたい。

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中根 雅裕
コンサルタント

ZERO GREEN CO.,LTD.
代表


ITをベースとした製造業進出支援サービス会社を経営、タイだけでなくASEAN諸国との比較検討した上で総合的にコンサルティング・サポートしている。

http://www.zero-green.com/


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